古家付きの土地は、更地に比べて売却価格が安くなる傾向です。また、購入者希望者を見つけづらく、お金をかけてでも古家を解体した方がいいケースもあります。一方で、売買契約や税金の面ではメリットがあり、古家付きの土地と更地のどちらがいいかは、一概には言えません。
本記事では、古家付き土地を売却するメリット・デメリットや注意点まで分かりやすく解説します。相続や住み替えなどをきっかけに、古家付きの土地を手放すことを検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。


古家付き土地とは?


古家付き土地とは、老朽化が進んで資産価値の低い建物が建っている土地のことです。築年数が古く、耐震性や住環境に問題がある場合が多いので、建物にはほとんど価値がないと見なされます。そのため、実質的には「土地」としての価値を重視して売買されるケースが一般的です。
ただし、古家があることで住宅用地としてのイメージがしやすく、購入希望者によっては再利用やリノベーションの可能性を見出されることもあります。売却の際には、建物の状況や自治体の規制なども加味したうえで判断することが重要です。
古家付き土地と中古住宅の違い
古家付き土地と中古住宅の大きな違いは「建物の価値の有無」です。古家付き土地は建物の資産価値がほぼゼロで、主に土地そのものの価値に基づいて取引されます。そのため、購入後には古家を解体し、新しく家を建てるケースが多いです。
一方、中古住宅は建物の状態が良好であれば、建物と土地の両方に価値が認められます。中古住宅は居住やリフォームを前提として購入される点も、古家付き土地との違いです。このように、古家付き土地と中古住宅は不動産としての評価が大きく異なるものの、登記上ではいずれも「宅地」として扱われます。
古家付き土地を売却する方法
古家付き土地を売却する方法には「古家を残したまま売る方法」と「建物を解体して更地にして売る方法」の2通りがあります。古家をそのまま残せば、解体費用がかからず売却準備の手間も少ないです。しかし、古家が付いていることで、買主が限定される可能性もあります。
更地にして売る場合は、買主が建築や土地活用のイメージをしやすく、古家付き土地よりも売れやすいでしょう。ただし、古家の解体費用が必要になりますし、固定資産税も高くなる傾向です。
古家付き土地として売却する場合 | 更地として売却する場合 | |
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メリット | ・解体費用がかからずコストを抑えられる ・固定資産税の軽減措置が適用される ・契約不適合責任を免責にしやすい ・買主が住宅ローンを組みやすい ・3,000万円特別控除の対象となりやすい | ・建築可能な状態なので売却しやすい ・土地の用途が明確で、活用の自由度が高い |
デメリット | ・建物の状態によって購入希望者が少なくなる ・売却価格が低い | ・解体費用が発生する ・固定資産税の軽減措置がなく税額が高くなる ・売却価格に見合わない費用負担のリスクがある |
古家付き土地として売却するメリット・デメリット


メリット | ・解体費用がかからずコストを抑えられる ・固定資産税の軽減措置が適用される ・契約不適合責任を免責にしやすい ・買主が住宅ローンを組みやすい ・3,000万円特別控除の対象となりやすい |
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デメリット | ・建物の状態によって購入希望者が少なくなる ・売却価格が低い |
古家付き土地として売却するメリット
古家を解体せずに売却するメリットは以下の5つです。
- 解体費用や手間がかからない
- 土地の固定資産税を抑えられる
- 契約不適合責任が免責になりやすい
- 買主が住宅ローンを組みやすい
- 特例の控除特例を使える期間が長い
解体費用や手間がかからない
古家を解体せずに土地を売却することで、初期費用を節約できます。解体費用は古家の大きさや構造によって異なり、安くても数十万円、高ければ百万円かかることもあります。
もしも古家を解体するならば、売主自身で費用を準備しなくてはいけません。高額な解体費用の準備が不要になるのは、古家付き土地として売却する大きなメリットです。また、解体業者を選ぶ手間も不要になるため、売却活動をスムーズに始められます。
土地の固定資産税を抑えられる
土地に建物が残っている状態であれば、住宅用地として固定資産税の軽減措置が適用されることもメリットです。住宅用地であれば課税標準が1/3に、200平方メートル以下の部分については1/6に軽減されます。固定資産税は、課税標準額の1.4%です。
例えば、面積が150m2で課税標準が2,000万円なら、更地の場合は固定資産税が28万円です。しかし、古家付きで軽減措置が適用されれば、約467,000円と大幅に固定資産税が少なくなります。
このように、土地の売却まで古家を残すことで税負担を抑えられます。建物があることで節税が継続できれば、売却を急がず適正価格で買い手を探す余裕が生まれるでしょう。


契約不適合責任が免責になりやすい
古家は法定耐用年数を超えていることが多く、資産価値がないと判断されると、契約不適合責任を免責にしやすくなります。契約不適合責任とは、売買した商品に欠陥があったり、契約内容と異なったりした場合、売主へ損害賠償や修繕費などを請求できる制度です。
契約不適合責任が免責になれば、売却後に雨漏りやシロアリ被害などの隠れた瑕疵について責任を問われるリスクを減らせます。売主にとってトラブルを回避できる安心感は、大きなメリットです。
買主が住宅ローンを組みやすい
古家が残っている状態だと「土地+建物」の一体物件として取り扱われるため、更地よりも買主が住宅ローンを利用しやすくなります。多くの場合、家や土地は住宅ローンを利用して購入するため、住宅ローンを組みやすいかは重要なポイントです。
特に、自己資金が限られている購入希望者は、住宅ローンの審査基準が緩和されることで物件に手が届きやすくなります。住宅ローンを組みやすい状態であれば、購入希望者を見つけやすく、売却のチャンスが広がるでしょう。
特例の控除特例を使える期間が長い
マイホームとして使用していた古家が残っている場合は『3,000万円特別控除』が適用される可能性があります。3,000万円特別控除とは、マイホームの売却時に譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。
しかし、更地にしてから売却する場合は、建物の取り壊し後1年以内に売却しなければ、3,000万円特別控除が適用されません。古家付きのまま売却することで、節税効果が高まり、さらには売却時期にも余裕ができます。
なお、自分が住んでいるか、住まなくなってから3年以内の家であることが適用要件です。自身が適用要件に該当するか、事前に確認しておきましょう。
古家付き土地として売却するデメリット
古家付き土地として売却するデメリットは、以下の2つです。
- 売却しにくい
- 売却価格が低くなりやすい


売却しにくい
古家があると、購入後の解体やリフォームの手間がかかるため、買主に敬遠される傾向があります。特に「すぐに家を建てたい」と考えている人にとっては、不向きな物件と判断されてしまうでしょう。
また、建物の状態によっては印象がネックとなり、内見希望者が少なくなるかもしれません。結果として長期間売れ残ってしまい、売却までに時間がかかる可能性があります。
売却価格が低くなりやすい
古家付きの土地は、売却価格が低くなる傾向です。建物が老朽化している場合、買主は解体費用を見込んで購入を検討するため、値下げ交渉をされやすくなります。
また、土地の活用方法が曖昧だと印象が悪くなり、相場より安い価格での売却を迫られることもあります。売却価格の値下げを避けるには、土地の利用価値を明確にし、魅力を伝える工夫が必要です。
古家を取り壊してを更地で売却したほうが良いケース
古家付き土地ではなく、更地にしたほうがスムーズに売れる場合もあります。以下のようなケースでは、解体を検討するのが得策です。
更地で売却したほうが良いケース
- なるべく早く売りたい場合
- 管理に時間や手間がかかる場合
- 少しでも高く売りたい場合


なるべく早く売りたい場合
早期売却を目指すなら、更地にするのが有効です。古家が残っていると、買主側で解体の手間や費用が発生するため、購入判断が遅れたり、敬遠されたりするリスクがあります。
一方、更地であれば建築プランが立てやすく、住宅を自由に建てたいと考える層にアプローチできます。古家を解体することで見た目がすっきりし、内見時の印象も良くなるため、買主の決断も早まり売却活動がスムーズに進むでしょう。
管理に時間や手間がかかる場合
古家を放置したままにすると、老朽化が進行し、倒壊やシロアリ被害、近隣住民とのトラブルの原因になることがあります。また、草木の手入れや清掃、防犯対策といった日常的な管理も必要です。
このような手間や維持費用、精神的負担を軽減したいのであれば、古家を解体して更地にする方がいいでしょう。また、遠方に住んでいる場合や、相続で取得した不動産の処分を考えている人も、更地にするのがおすすめです。
少しでも高く売りたい場合
更地は土地としての利用用途が広がるため、買主側にとって魅力的です。住宅用地だけではなく、事業用地としても検討される可能性があり、結果として売却価格のアップにつながる可能性もあります。
古家の解体費用を見込んだ値下げ交渉も避けられるため、少しでも高く売りたい場合は、更地での売却を検討するといいでしょう。特に、立地が良いエリアでは、更地の需要が高まっています。買主の選択肢が広がることで、売却チャンスが増えるのも大きなポイントです。
古家付き土地の売却にかかる費用・税金


古家付き土地を売却する際は、物件そのものの価値だけでなく、売却に伴って発生する諸費用や税金についても把握しておくことが大切です。諸費用や税金について知っておくことで、より正確な資金計画が立てられます。以下では、古家付き土地の売却にかかる費用・税金について詳しく説明します。
売却にかかる費用
古家付き土地を売却する際には、以下のような費用が発生します。
仲介手数料 | 売買契約の成立時に、不動産会社へ支払う成功報酬。売却価格×3%+6万円が目安。 |
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解体費用 | 建物を取り壊す際の費用。費用は構造や面積によって異なり、木造の戸建て住宅であれば100万〜200万円程度が一般的。 |
測量費用 | 境界を明確にするためにかかる費用。費用は、測量の種類や土地の面積によって変わる。目安は20万〜50万円程度。 |
登記・抵当権抹消費用 | 所有権の移転登記や抵当権抹消にかかる登録免許税と、司法書士への報酬。5万〜20万円が目安。 |
特に解体費用は、地域や建物の構造によって差が出ます。売却価格に対する手取り額にも影響するので、複数社に見積もりを取るのがおすすめです。
- 仲介手数料には別途消費税がかかります。
- 仲介手数料の計算式
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( 売買価格 × 3% + 6万円 ) + 消費税


売却で生じる税金
土地や建物を売却する際には、以下のような税金がかかります。
印紙税 | 売買契約書に貼付する印紙代。税額は契約金額によって異なり、1,000〜3万円が目安。 |
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譲渡所得税 | 売却益(譲渡所得)に対して課される税金。所有期間が5年超か否かで税率が異なる。長期所有での売買は20%、短期所有の場合は39%。 |
固定資産税 | 毎年1月1日時点で固定資産を所有している人に課税される。年度の途中で売買した場合、引渡し日で日割り精算が必要。 |
譲渡所得税は、売却益に対して課税されます。売却益は、不動産の取得費用や解体費用、仲介手数料など、諸経費を差し引いた金額です。取引価格によっては高額になるので、譲渡所得税の支払額を事前に計算し、売却益から確保しておきましょう。
古家付き土地を売却する際の注意点
スムーズな売却を実現するためには、いくつか注意点があります。以下の4つのポイントをチェックしておくことで、売却後のトラブルも回避できるでしょう。
売却時のポイント
- 境界線を明確にする
- 契約不適合責任を免責にする
- ゴミは処分する
- 複数の不動産会社に相談する
境界線を明確にする
土地の境界が不明確なままだと、買主との間でトラブルが起きたり、売却後のクレームにつながったりする可能性があります。特に都市部や住宅密集地では、土地の境界をめぐってのトラブルが少なくありません。
事前に専門業者による測量を実施し、境界標(杭)を設置することで、買主に対して安心感を与えられます。結果として、信頼性が高まり、スムーズな契約や売却価格の安定につながります。場合によっては隣地の所有者との話し合いが必要になることもあるため、スケジュールに余裕を持って準備しましょう。
契約不適合責任を免責にする
古家付き土地を売却する際には、契約不適合責任を免責とするのがおすすめです。特に築年数が古い場合、売却後に雨漏りや構造の不具合が発覚し、責任を問われる可能性もあります。
修繕費用の支払いや損害賠償のリスクを回避するには、契約書に「現状渡し」および「契約不適合責任を免責」と明記しておくことが重要です。契約書の内容については、仲介業者と事前に建物調査を実施したうえで、丁寧に条件を詰めるようにしましょう。
ゴミは処分する


古家付きの土地には、家財や生活ゴミなどがそのまま残されているケースがあります。こうした残置物があると、買主からの印象が悪くなり、売却の妨げになるでしょう。
不要な物は事前にすべて処分し、室内外をできるだけ清潔に保つことが大切です。買主に「すぐに使えそう」と感じてもらえる状態に整えておけば、古家付きでも購入されやすくなるでしょう。忙しくて掃除の時間がなかったり、ゴミが多かったりする場合は、清掃や処分の代行業者に依頼するのもひとつの方法です。
複数の不動産会社に相談する
不動産売却では、複数の会社に相談することで、より良い条件で売却できる可能性が高まります。1社だけに依頼すると、査定額や提案内容が限定されてしまい、損をしてしまうかもしれません。複数社から見積もりを取れば、相場感や希望に合った売却プランが見え、より有利に取り引きを進められるでしょう。
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古家付き土地を売却する際に活用できる3,000万円控除
古家付き土地を売却する際、一定の条件を満たせば『3,000万円特別控除』を利用できます。マイホームを売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円までを非課税にできるという制度です。適用されるには、売主自身が住んでいた物件であることや、親子や夫婦間の売買でないことなど、さまざまな条件があります。
譲渡所得の算出方法は「売却価格 − 購入価格 − 諸費用」です。特例を利用することで、節税につながり、手元に残る資金を増やせます。不動産会社などの専門家に相談し、適用要件に合致するかを確認しておくと安心です。
古家付き土地売却の流れを理解してスムーズに引き渡そう


古家付き土地の売却では、建物を残すか解体するかで売却戦略が大きく異なります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自身の状況や目的に応じた方法を選びましょう。また、費用や税金について理解し、しっかり事前準備することで、トラブルを防いでスムーズな取り引きが可能になります。
もしも愛知県で、古家付き土地を売却して新しい家を購入したいとお考えの方は、お気軽にフジケンへご相談ください。住まいのことから土地や住宅ローンのことまで、無料でご相談を受け付けています。
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